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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第1章 《序章》

 少女が去った方を、少年は睨みつけるようにして立っている。
 また風が吹き、無数の白い花びらがさわさわと揺れた。まるで悲鳴を上げるような、物哀しい音。心の奥をざわめかせるような音だ。
 その音は、心ない言葉のつぶてを投げつけられた少女の心の悲鳴にも少年は思える。
 だが、自分でも、どうにもならない。あの少女の顔を見ただけで、いつも心にもない科白が口から飛び出し、気が付けば、容赦ない言葉の数々で彼女を傷つけている。

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