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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 あんな男には絶対に弱みを見せては駄目だ。とにかくこうなったからには、父が迎えを寄越してくれるのを待つしかない。今一つの頼みの綱は叔母の皇太后安子の存在だけれど、こちらにも幾ら逢わせて欲しいと頼んでも、逢わせて貰えないのが現状であった。
 公子は、くすんと鼻をすすり、滲んだ涙をぬぐった。何もすることもなく、何をする気にもなれない。再び掛け衾を頭から引き被り、布団に潜り込んだ。

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