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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 泣きながら、公子は夢を見た。
 夢の中では、公子は懐かしい我が家に帰っていた。公子の部屋の前栽には雪柳が今を盛りと咲き誇っている。
 公子は微笑みながら、その可憐な花を見つめていた。
 優しい春風がそっと花を揺らし、公子の髪を撫でてゆく。雪のように舞い上がる花びらがはらはらと散り零れ、地面を隙間なく覆い尽くす。

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