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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 帝を伴い、兄である左大臣藤原道遠の屋敷に渡ったことがある。もとより公式の訪問ではなく、供回りの者も数人のお忍びであった。
 あの日、帝は一つ上の従姉と初めて対面した。肩で切りそろえた振り分け髪も愛らしかった公子は、帝の良い遊び相手になるであろうと安子は期待していた。
 ところが―。二人が庭で遊び始めてほどなく、庭からけたたましい子どもの泣き声が響き渡った。

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