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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

―毛虫なんか汚くて、気持ち悪いじゃないか。
 帝が頬を膨らませて言うと、安子は微笑んだ。
―主上、確かに毛虫は見ていて気持ちが良いものではございませぬ。ただ、生命あるものをむやみに殺すのは確かに良きこととは申せませぬ。殊にこの国を統べる御身でおわせば、たとえ虫とはいえ、生きとし生けるものには皆、おしなべて等しき情を注がねばならぬこと、ゆめゆめお忘れなさいませぬよう。今後は、そのような無益な殺生はなさいませぬように。

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