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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 帝は三歳で即位し、常に周囲には大人ばかりという環境で生い立った。しかも、自分よりもはるかに年上の彼等は帝の臣下であり、表立って帝に逆らうことはない。良い歳をした大の大人が幼児に向かって這いつくばり、平伏し、礼を取る。それが当然と思い込んで育ってきたのである。
誰もが自分の言葉に素直に従うものだと信じ込んでいるのに、虫を殺したことを面と向かって公子に詰られた。これまで甘やかされて育った我が儘な帝には、そのことが我慢ならなかったに相違ない。

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