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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

「何のお話にございましょう」
 空惚けた表情で返すのに、安子は小さな吐息をつく。
「左大臣の姫のことですよ。もう良い加減に屋敷に戻しておやりになったら、いかがです? 左の大臣もさぞ心配していることでしょう。主上もよくご存じのことかとは思いますが、あの方はなかなか侮れぬ方にございますよ。

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