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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第4章 参の巻

 公子は心優しい娘だ。安子の見舞いのため参内したあの日、公子は雪柳の花をひと枝自ら持参した。安子はそのことを公子との対面の後から女房に聞いて知った。
 自ら庭に降り、そのひと枝を伐ったという。
 恐らくは美しい花を眺めることで、少しでも安子の気鬱が晴れればとの心遣いだろう。
安子は自室にその雪柳のひと枝を飾り、朝に夕に眺めて過ごした。純白の白い花は冬に降る雪を彷彿とさせ、じっと見入っていると、何やら心までもが浄らかな雪に洗われて、清浄になってゆくような心持ちがした。

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