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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 磨き抜かれた廊下を随分と歩き、辿り着いたこの部屋は広くて立派だ。今日、公子をここに案内したのは、大宮御所で安子に仕えているあの年老いた女房であった。
 公子がここはどこなのか訊ねて、何も応えず、逃げるように去ってしまった。
 だだっ広い部屋の奥に立派な御帳台がある。その、いかにも貴人のものらしい御帳台を見ている中に、唐突に公子の中を厭な予感がよぎった。

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