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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 その光景を見ていると、いつまで経っても飽きることがない。公子はその場に佇んで、心和む春のひとときに思う存分に浸った。
 と、唐突に頭上から何かが落ちてくる。愕いて上を見上げると、その何かはポトリと小さな音を立てて地面に墜落した。しゃがみ込み、そっと地面に落ちたものを指先でつまみ上げる。公子のほっそりとした指先の間でしきりに小さな身体を蠢かせるのは―、何と毛虫だった。

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