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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 恐怖で叫び出しそうになる。絶望で心が張り裂けそうだ。
「どうした、何故、逃げる? 姫はそんなに俺が嫌いか?」
 ぞくりとするような寒気を含んだ声で言った次の瞬間、帝は唐突に別人のような優しげな笑みを浮かべた。
「俺のものになれ、公子。そなたと俺は出逢ったときから、こうなる運命だったのだ。大切にしてやるし、そなたが大人しく俺のものになるというのであれば、妻は生涯そなただけだと今、ここで誓うても良いぞ」

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