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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 まるで帝の背後には無限に続く闇の世界がひろがっているようで、不気味だ。
 その形良き双眸もまた彼を取り巻く無明の闇をそのまま映し出しているかのようで。
 公子は無意識の中に首を振りながら後ずさっていた。帝がじりじりと間合いを詰めてくる。公子が後ずされば後ずさるほど、帝は近付いてくる。
 やがて背が固い扉に辺り、公子は自分が極限まで追いつめられたことを知った。

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