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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 凍てついた手がつうっと公子の頬をすべる。思わずゾッとするほど冷たい手だ。まるで触れられたその箇所から氷と化してゆくのではないかと思ってしまうほどに。
 こんな男にはたとえ指一本たりとも触れられたくない。そう思った瞬間、思わず頬に添えられた手を振り払うと、案の定、男の顔色は濃くなり、さっと険しいまなざしになった。
「どのように申し聞かせても、俺に靡く気はないらしいな」
 帝がふいに公子の手を掴んだ。

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