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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 公子の眼からとめどなく溢れる涙が錦の夜具をしとどに濡らす。前結びになった帯がするすると解かれた。衣擦れの音が妖しく夜の底に響く。グイと合わせを開かれると、ひんやりとした夜気が膚に纏いついてきた。
 けして大きくはないけれど、形の良い双つの膨らみが夜陰にほの白く浮かび上がっている。しばらく暗い愉悦を宿した瞳で公子の胸を見つめていた帝が口の端を引き上げた。
 その顔が近付き、公子の胸に覆い被さる。

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