テキストサイズ

無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 公子はそろりと身体を動かし、立ち上がった。しどけなく開いた胸許をかき合わせると、手早く帯を結ぶ。急い御帳台を出た。幸いにも先刻は閉まっていたはずの両開きの木戸は今度は軽く内側から押しただけで難なく開いた。
 戸を細く開けて、廊下に誰もおらぬのを確認した上で、身を滑らせるようにして夜の御殿から出た。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ