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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 その時。
「姫ッ」
 帝の声が背後で聞こえ、公子は蒼褪めた。身体中の血が音を立てて引いてゆく。
 まさか、こんなに早く見つかってしまうなんて。
「おのれ、この期に及んでもまだ逃げるか」
 血走った双眸をカッと見開いた帝の表情はまるで猛り狂った手負いの獣のようだ。どうやら、今の帝は何としても公子の身体を我が物にすることしか考えられないようだった。

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