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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 ほどなく紙燭を掲げ持った若者の姿が闇の中から現れた。愕いているのは公子の方だけではなく、相手も同様なのだろう。
 公子は身を強ばらせ、ふいに出現した若い男を見つめた。男は二十五、六にはなるだろう、長身のなかなかに整った顔立ちの若者だった。そのいでたちから、かなりの身分の貴族だと判る。
「あなたは―」
 男が茫然と呟くと、公子は男に夢中で頼んだ。

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