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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 公子の眼に新たな涙が滲んだその時、突如として手前にぼんやりとした灯りが浮かび上がった。夜の闇に滲む灯りは宮廷警護の武士か、あるいは宿直(とのい)の公卿のいずれかに違いない。
 公子は恐怖に色を失い、身体を震わせた。
 次第に近付いてくる灯りが真っすぐに公子の顔を照らし出す。
 公子はあまりの眩しさに、一瞬顔を背けた。

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