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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 それも無理はなかった。皇太后安子の見舞いと称して参内したその日から今日まで、あまりにも色々なことがありすぎた。考えてみれば、半月近くもの間、ずっと後宮のひと部屋に閉じ込められていたのだ。
「あなたは、もしや」
 地面に座り込んだままの公子に合わせるように、男もまた地面に片膝をつく。
 夜よりも深い瞳に見つめられ、公子は思わずうつむいた。

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