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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

「今宵、主上のご寝所に侍るはずであったご愛妾が突如としていらっしゃらなくなったと宮中では今、大騒ぎになっています」
 〝ご愛妾〟―、その言葉に公子は眼の前が真っ白になった。
「私は、私は主上の愛妾などではありません」
 公子は震える声で訴えた。
 大粒の涙が滴り落ち、地面に黒い染みを作る。夜目にもその染みが点々と刻まれているのが見える。

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