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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第5章 四の巻

 それでも、流石に途中からは走るのを止め、脚取りはゆっくりとしたものになった。
「あの、私なら大丈夫です。一人で歩けますから」
 公子が男の負担を考えて控えめに言うと、男は首を振る。
「気にしないで。それよりも、ここら辺に外へと通じる抜け道があるはずです」
 男は廷臣ゆえ、宮中のことには詳しいらしい。慣れた様子で公子を背負い、夜の闇の中を灯りも付けずに確かな脚取りで迷わず歩いてゆく。

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