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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 途端に公子の身体中の力が抜けてゆく。
「おいでになっていらっしゃましたの?」
 公子が言うと、男は微笑んだ。
「ええ、かれこれ四半刻前にこちらに着きました」
「申し訳ございません、私ったら、公之さまがおいでになられたのも知らずに、ずっと眠っていたのですね」
公子は申し訳なさで一杯になる。

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