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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 都からはるばるこんな場所まで訪ねてきてくれた公之にも済まないと思うし、十日に一度ほど訪れる公之の貌を見るのが今ではいちばんの愉しみになっている。ほんの少しの時間でも多く公之の貌を見ていたいと思ってしまう。
 むろん、そんな胸の内を当人の前で打ち明けることはできないけれど。
「いや、姫の可愛らしい寝顔をずっと飽きもせずに眺めていたゆえ、お陰で有意義な時間を過ごせました」

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