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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 二人の話題は互いの身の上話から始まり、多岐に及んだ。こんなにも誰かと話に打ち興じたのは、公子にとっては生まれて初めてのことであった。
 また、公之は、そういった雑談の中に大切なことを織り交ぜて、さりげなく都の近況を教えてくれもした。とはいっても、直接的な言葉で告げるのではなく、言葉を選んで必要なことを少しずつ話してくれた。そんなところも公之という男の優しさがよく表れていた。

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