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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 女人が昼日中から庭へ出て姿を晒すのは、けして体裁の良いことではない、むしろ不作法なこととされる。
 と、公之は淡く微笑した。
「私のことなら、何もご遠慮はいりませんよ。私はどうも世の良識ある人々とは違っているようで、女人だから屋敷の奥深くに閉じこもっていなければならないとか、そんな堅苦しい因習や習わしには、あまり拘らない質なのです。こんなところもおよそ、紀伊家の人間らしくないと、よく他人からは言われますが」

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