テキストサイズ

無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

「もし」
 呼びかけて、公子は、うっと口許を抑えた。蹲った老婆から耐えられないほどの臭気が漂ってくるのだ。
 これは―。公子は俄に不吉な予感に囚われ、老婆の肩にそっと手をかけ揺さぶった。
 と、頼りなげな老婆の身体は、クラリと揺れ、公子が手を放すと、そのまま地面に倒れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ