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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

「―!」
 公子はその場に固まり、物も言えなかった。
 老婆は既に死んでいた。事切れてからもう幾日も経過しているのか、道に仰向けに倒れた老婆の顔は半ば白骨と化し、わずかに残った肉は腐り蛆が湧いていた。
 気の毒に、ゆき場がなく倒れ、そのまま息絶えてしまったのだろう。
 これが、庶民の現実なのだ。

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