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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 貴族たちは管弦だと詩歌だと遊興に現を抜かし、夜毎、華やかな恋の花を咲かせ、優雅な暮らしを送る一方で、庶民はその日の食べる者にも事欠き、弱った老人や幼児は儚く生命を散らす。
 公子はしばし物言わぬ骸と化した老婆を茫然と見つめていたが、手のひらを合わせて黙祷を捧げた。
彼方に紅い門が見えている。

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