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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第6章 伍の巻

 流石にのんびり屋の公之の顔にも焦りの色が濃くなっていた。女の脚でそう遠くまでゆけるとは思えない。それに、公子は都から出たこともない姫なのだ。宇治の別邸を出て、次に向かうとすれば、やはり住み慣れた洛中だろう。
 そう読んで洛中を探したのだが、結局、愛しい女を見つけられなかった。その後、洛外でも公子を見つけられなかった公之は再び洛中に戻り、まずはもう一度朱雀門辺りを探そうと思い立った。

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