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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 何しろ、公子の婿君となる男は、この毛虫を公子と共に眺めて〝可愛い〟と感じる世にも稀な感性の持ち主でなくてはならないのだ。そんな奇特な男はこの世に一人とおるまい。せめて、その厄介な癖を直しさえすれば、この器量と優しげな気性であれば、左大臣の姫という肩書きなぞなくとも十分に求婚者が見込めると思うのだが。
 相模は、再度、溜息を零しつつも、実際にはそれどころではなくて、悲鳴に近い声を上げた。

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