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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 相模に半ば手を引かれ―というよりは、引きずられるようにして、公子は自室に戻った。本当はもう少し雪柳の花や可愛い虫を眺めていたいと思ったのだが、どうやら、今の相模は怖い顔をしていて、公子の頼みなぞ聞き入れてくれそうにもない。
 庭から簀子縁へと上がったところで、相模がその場にひれ伏した。
「申し訳ございませぬ、私がお傍にお付きしておりながら、どうかお許し下さいませ」

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