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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 父は父で、口さがない噂の的となっている公子を不憫に思っているのだと、公子はよく知っている。公子は、どこまでも父を信じているのだ。が、確かに道遠が公子を哀れに思っているのは事実だが、それがすべてというわけではない。結局のところ、どこに嫁がせたくとも叶わぬ娘の将来を端から諦めているのだ。
「ところで、姫。一つ頼みがあるのだがな」
 唐突に言われ、公子は小首を傾げた。

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