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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

「実は、姫の許を訪れたのもそのためなのだ」
 道遠に促され、公子は御簾を巻き上げて、部屋の内に戻る。父娘の間ゆえ几帳を引き回したりすることもせず、打ち解けて話すのはいつものことである。
 道遠は、胡座をかいて肘を片膝に載せた。
 頬杖をつくような恰好で、公子をじっと見つめる。
「大宮さまの御事なのだが」
「叔母上さまがどうかなされたのでざいますか」

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