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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第2章 壱の巻

 公子は俄に表情を引きしめる。
 大宮というのは、道遠の妹安子(やすらこ)である。今年、御年三十七になられる。今を去ること二十二年前、先帝の後宮に入り、女御となった。その三年後、春宮をお生み奉り、更に次の年、立后して中宮となられた尊いお方だ。ご夫君である先帝を早くに失われ、以後は幼き帝の母君、つまり皇太后としての尊崇を受けている。大宮というのは皇太后の別称である。

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