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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 弐の巻

 公子が参内したのは、その翌日のことである。父道遠に命ぜられるままに内裏におわす皇太后安子を見舞いに訪れたのだった。
 たとえ血縁上は近しい叔母と姪の間柄とはいえ、相手は御国母、帝のご生母である。しかも、幼い頃は娘も同然に可愛がられたといっても、公子はもう安子に十年以上も逢ってはいない。いきなり見舞いと称して現れ、馴れ馴れしい態度を取るのもはばかられた。

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