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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 大宮御所と呼ばれる一角が、安子の住まいになる。公子はその日、萌黄の襲を身に纏っていた。芽吹いたばかりの新鮮な黄緑色の衣(きぬ)が公子の初々しさをいっそう引き立てている。
 公子の両腕には、白い小花をたわわにつけたひと枝が大切そうに抱えられている。左大臣家の庭から今朝方、伐り取られたばかりの雪柳である。

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