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無垢な姫は二度、花びらを散らす~虫愛ずる姫君の物語り~

第3章 弐の巻

 しばらくはその場に沈黙が満ちた。
 公子は何も言わず、ただ黙って安子の次の言葉を待った。こんなときは、自分から話しかけるよりは、安子が何か口にするのを待った方が良い。人は哀しみや苦しみを抱えている時、自分以外の誰かに積もる胸の内を打ち明けるだけで、心が幾分かでも軽くなるものだ。
 沈黙はやがて安子の唐突な言葉によって破られる。

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