夜の幕がゆっくりと開く
第1章 夜の幕がゆっくりと開く
「…めんどいわ。こんなん警察でせぇよ。時間の無駄やわ。」
静まり返る資料室には俺とジョニーがいた。
「向こうにだっていろいろあるんやろ?…それより、見つかった?」
「…ない。インサイダー関係は。ただ、なんか過去の誘拐事件とか、そんなんの新聞の切りぬきが大量にあったりはするけど。」
二人しかいない部屋は基本閑散としていて、たまに下から物音が聞こえる。
下といっても音の限りではずいぶんと下で、二回の資料室にいる俺らはどうやらこの建物には地下があると推測できた。
そんなことまでもがわかってしまうほどこの部屋の付近には誰もいない。いるとしたら俺らのように身を潜めているやつばかりだ。
「…ジャッキー。ちょっと来て。」
「…なんやねん、これ。…なんでジョニーの『情報を入手する』にだけ印がつけられてんねん?」
ジョニーが手にしていたのは一冊の本。その中に挟まれていた小さなメモ用紙を俺に見せてきた。
書かれていたのは七人の始末屋の名前とそれぞれの役割。
「…過去の事件とジョニーが関係してるとかって…?」
俺らが欲しい資料はそれじゃない。
ジョニーに本を直させて、俺らは部屋の外へと出た。
廊下には一見誰もいない。
ジョニーが歩き出した時、とっさにジョニーの腕を引いた。
ジョニーの顔の前を一本のナイフが空を切る。
俺は反対側へと逃げようとした。しかし、その時にはすでに見知らぬ男たちに囲まれていた。
「ジョニーを出せ。」
「いきなりなんや。」
「お前らのどちらかなのはわかってんだ。出ないなら、二人とも力ずくで連れていくまでだ。」
俺はとっさにサバイバルフォークを手にしたが、出すことをやめた。敵の人数が多い。どうも勝てそうにない。
俺はジョニーと背中合わせになって相手の様子をうかがった。
本当にどちらがジョニーかわかっていないようだ。
俺はジョニーの手にこっそりサバイバルフォークを握らせた。
そして無防備な俺はあえてそのまま敵陣の中へ身を投げた。
案の定、相手できたのは数人であっさりと捕まり、ただ俺の奇想天外な行動に驚くジョニーの顔が見えた。
そして俺は最後にジョニーに叫んだ。
「ジャッキー!!なにしてんねん!!はよマックに知らせろ!!」