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Take me

第11章 11


「千晃さん、紘夢くんが…」
「起きたんだね。調子はどう?」

リビングに来た俺と舞香さんに気付いて、ソファから立ち上がり聞いた。


「うん、大丈夫だよ」

本当はすごく痛いところだらけだけど。

そう答えた俺を見て、お兄ちゃんは辛そうに微笑んだ
きっと俺の嘘に気付いたんだろう。


「じゃあ、私は夜ご飯作りますね」


俺はお兄ちゃんの隣に座る。
初めて来た家だし、見慣れない景色にそわそわしてしまう。
勿論、物の配置もまるっきり違くて。


「紘夢はこの家初めてだもんね?」
「うん」
「それでね、しばらく此処に一緒に住もうか」

え…ここに一緒に…

そう言われる事は想像ついていたけれど、改めて言われるとやっぱり躊躇する。

「いや、でも…」

「紘夢くん、私達のことは気にしないで?
紘夢くんが一緒に住んでくれるなんて、大歓迎だよ!」

キッチンから舞香さんがそう言ってくれた。



でも、二人がそう言ってくれたとしても、

耐えられないのはきっと、俺の方。




好きな人とその好きな人が目の前で一緒に笑い合うこと


同じ家に住んでしまえばそんな場面、幾度も見ることになるのは当然。




でも俺は、嫉妬深くて汚れた心の持ち主だから







好きな人の幸せを素直に願うことができないんだ。



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