Take me
第18章 18
目から溢れる水は止まらなくて、その一粒一粒を瑛士は丁寧に手で拭う。
「瑛士っ…さわらないで…っ」
俺に触れる瑛士の指は優しいのに、嬉しいのに、心には鋭いものを繰り返し何度も刺されているような感覚。
「無理、好きな人が俺を想って泣いてんのに、
ほっとける訳ねぇだろ…」
す、きな…ひと?
「俺はっ…あおいちゃんじゃないよ…っ…?」
「バーカ、何で俺の好きな人があおいちゃんなんだよ」
違うって言うのか?
そう優しく言う瑛士は、俺の目の前に立って、腰を折って目線を合わせる。
「手、出して」
言われるがまま、手を差し出す。
そこにそっと置かれたのは、
「リング…?」
「紘夢、今日誕生日だろ?」
「ぇ…」
「おめでとう。」
自分の誕生日など、全く覚えていなかった。
瑛士のことでいっぱいで完全に忘れていたから。
「あおいちゃんの告白はとっくに断ってた。
いつも一緒に帰ってたのは、同じ店のバイト紹介してもらって働いてたから…
それ、プレゼンしてやりたくて。」
さらに涙が込み上げて来て、止められない。
「あー、泣くなよ…?」
困ったように笑う瑛士に俺は、思い切り抱きついた。
そして、沢山たくさん泣いた。