テキストサイズ

息もできない

第14章 喜んで欲しいんです

俺はなんだかむっとして
でも
黒澤さんの手前不機嫌を露わにするわけにもいかず


気にしてない風を装ってカウンター席についた
俺の不機嫌さなんて気づいてもいなそうな春陽は陽気に黒澤さんに話しかける



「それにしても本当に久しぶりだな、朗」
「あぁ。最近こっちに来たからな」


最近だったんだ
あのお店に来たの


話は二人が出会った時や、学生時代のことにも発展した

「あの時はさーー…」

と幼馴染みならではの昔話をしている


「そうだったな。あの時の朗は本当に面白かった」
「お前だって…」


俺にはその話わかんないじゃん…!
なんか

つまんない、な


親しそうに話して、多少スキンシップがある


んー……なんか
心臓が苦しい、し

このままじゃ不機嫌が顔に出てしまいそうで


「すみません、今日は俺これで失礼します」
「え、直!?…ちょっと」

作り笑いでごまかして
俺を止める春陽の声を無視してカウンターにお金を置いて店を出た


俺の知らない、春陽のこと
黒澤さんは知ってるんだ


俺は………この前会ったばっかりだ


少し歩いたところで立ち止まって目元を拭う
うっすらと涙が滲んでいた

その時メールの着信を知らせる音がした
それは春陽からで

『何かあった?
俺今日は抜けられそうにないんだけど1人で大丈夫?』

俺はそのメールに『大丈夫』って返信して

明日、今日甘えられなかった分取り返してやる!
と胸に誓った

ストーリーメニュー

TOPTOPへ