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息もできない

第17章 会社に行くのです

「ぅ……えぇ…っ…」


両手を抑えられているから顔を隠すことが出来なくて俺はひたすら泣くことしか出来ない

すると春陽が掴んでいた手首からふと力が抜けた
俺は春陽の下からもがくように抜け出す


「直…っ!」


俺が立ち上がって鞄を掴んだぐらいで春陽が後ろから俺を呼んだ

けど
まともな思考が出来ない今俺が立ち止まったって話なんか出来っこない

だから振り返らない、止まらない
俺はそのまま春陽の家を走って出た



なにも考えずに、走る
走って
走って

立ち止まる


それで、しゃがみ込む



我儘だって思う
自己中心的だってわかってる

だけど


「追ってきて、欲しかったぁ…」


さっきなんて比較にならないほど涙が零れる
それを拭いてくれる人がいないことが余計に悲しくて、より涙が流れる


さっきの言葉は傷ついたんだ
でも

気づいた


「俺…春陽に嫌われたら………」

生きていけない…

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