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「私ね、昔の知人に会いに行っていたの」
「そうですか」


それ俺と関係あるかな…
どうやって返事すれば良かったんだろう


「それでね、いいこと教えてもらってきたの」
「はぁ」


なんだろう
なんか含みのある言い方


大崎さんが視線を外して軽く片手を上げると注文を取りに藤波さんがやってきた


「ご注文ですか？」
「ホットコーヒーをお願い」


大崎さんはそう言うと俺に視線で何か頼むかと聞いてきた
俺が首を横に振ると藤波さんは奥へと歩いて行って
頬杖をつく大崎さんと俺がまた取り残された


無言が続く


その間に淹れるだけのホットコーヒーを藤波さんが運んできてまた去って行った

俺が気まずさに耐えている間大崎さんは特に何も感じていないらしく優雅にコーヒーを飲んでいる

永遠に続くかとも思えた沈黙は大崎さんによって破られた

「友人に教えてもらったいいことって言うのはね、谷口さんにも関係のあることなのよ？」

背筋に悪寒が走った


この人何が言いたいんだろう
怖い
怖い

俺が黙っていると大崎さんが俺をチラリと見てふと笑った
そして飲み終わったコーヒーカップをテーブルに置いて立ち上がる

「でもその話はまた今度ね」

大崎さんは怪しい笑みを浮かべた