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息もできない

第20章 大崎さんの

「いえ、大丈夫です」
「でも重そうですし」


尚も話を続けようとするその女の人に「すみません。急いでるので」と言って振り切り俺は改札を通った


電車に揺られながら考える


もしかしたら、春陽と大崎さんの間に入ってかき回すようなことをするのは間違ってるんじゃないかって

本当は春陽も大崎さんのことが好きで、俺のこと邪魔に思っていたんじゃないかって

でも


俺から告白したあの日から何度も春陽に言われた「好き」って言葉を思い出すとどうしても信じられなくて

だからもう少しだけ、悪あがき


俺はまた泣きそうになってそれを紛らわすように大きなため息をついた


そのあとのお盆休みは特に何をするでもなくほとんど家に引き篭って過ごした

好きな漫画を最初から読み直したり、買って読んでなかった小説を読んだり
基本は読書


でもどれも、ダンボールから引っ張り出さなきゃいけなかったから心が痛くて内容なんて覚えてないんだけど




そして会社が始まる日
俺はいつも通りダークブルーのスーツを着て家を出た


会社までの道のりを歩きながらまた改めて覚悟を決める


春陽が幸せに暮らせるなら、大崎さんと一緒の道を歩いていってもいいよ
でもそれが確かめられるまで、俺は春陽を諦めないから

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