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息もできない

第24章 過去と現在

話が聞こえない程の離れたところに移動して電話をする

電話を終えて直のところへ戻ると、直はぼんやりと海を眺めていた


「直、お待たせ。そろそろ行こうか」


俺が声を掛けると直はゆっくりと振り向いて「うん」と頷く
その顔が少し不安そうに見えて、俺の心もざわついた


「直?どうした?」


俺が顔を覗き込むと直は作り笑いを浮かべた


「ん?なにが?」
「……いや、何でもない」


俺は追求出来なかった


直が何を考えているのかわからない
家を出る前はなんともなかったから、千尋の家で何かあったかな


俺達は車に乗って駐車場を出た

暫く車を走らせていると窓から外を眺めていた直が不思議そうな声を上げた


「春陽、家はこっちじゃないよ?どこか寄るの?」
「うん。これからプチ旅行」
「え!?」
「さっき行こうって言ってたでしょ」
「ぇ、きょ…今日?行くの?」


俺は突然のことに焦る直に笑いながら「嫌?」と聞いた

すると直は驚いて起こしていた上体をシートに沈めた


「いや、じゃ……ないけど……」
「なら決まり」


俺がそう言ってから暫く直は現実を受け入れるために黙っていて

そして急にはしゃぎ出した


「ねぇ春陽!どこに行くの?泊まるところはどんなとこにする?」
「さっき予約したよ」
「電話してたやつがそうなの?」


直は手で口元を隠しながら微笑んだ


「はーー……楽しみだなぁ」

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