息もできない
第25章 息もできない
「ぅぅう〜〜〜………」
涙を止めようと唸っていると、春陽は少し笑いながら俺を優しく抱き締めた
俺は春陽の背中に腕を回して、強く抱きつく
一生、側にいて
春陽の言葉に返事をしなくちゃ、と涙で震える喉からようやく声を出す
「俺、で……よければ……っ」
俺の言葉に春陽の腕に少し力が篭る
「直じゃなきゃだめ」
「……うん。俺も」
春陽の背中から手を離して、春陽の肩越しに指輪を眺める
シルバーのリングにはシンプルな模様が彫り込まれている
「これ、いつの間に買ってたの?」
俺たちは一緒に住んでるんだし、前から部屋に置いて隠しておくのは無理だよね
すると春陽は俺の耳元に鼻を擦り付けながら
「ん?何時でしょう?」
と言った
「教会のことと言い、指輪のことと言い、今日はサプライズが多いね」
「プロポーズなんて大抵はサプライズだろ」
プロポーズ……
日本では同性同士の結婚は認められない
実現のしない『結婚』が俺たちの前に立ちはだかっているように思えた
「男同士は結婚できないんだよ?」
「婚姻届を出すだけが結婚じゃないよ、直。事実婚、なんて言葉もあるでしょ」