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息もできない

第30章 番外編「恋人達の聖夜」


そして突然大きな声を上げ短めの通話で電話を切ると、俺に向きなおる隆君

その顔には、満面の笑み


「ハルさん! 早く鍵閉めて出ましょう!!」
「……わかりやすいな、お前」
「へへ、彼女がすぐそこまで迎えに来てくれたんです! 怒ってごめんね、仕事お疲れ様って!!」
「はいはい、わかったから。早く閉めるぞ」
「はい!」


さっきまでの死んだような顔はどこへやら、突然生気を取り戻した唯一の仕事仲間に呆れてしまう


俺も早く帰って直の寝顔でも眺めよ


それからすぐに帳簿や掃除道具を片付けて店を出た

外は真冬とあって身が凍るほどの寒さ

隆はそれでも元気なまま真夜中だって言うのにやたらと大きい声で「お疲れ様でした!」と走って去っていった

俺は1人寂しく帰路につく


俺も、直が待ってたらいいのに……

って、風邪引いても困るし誰かに声かけられたら堪らないしダメか

本当にそんなことされたら嬉しいけど怒るだろうな、俺


「はぁ……」


溜息が白く濁って風に流されていく

センチメンタルになる


夜中で
もうイルミネーションも消されてて
街にはカップルだらけ

そりゃ寂しくもなる

俺には帰ったら直がいるからいいけど

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