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♢Fallen Angel♢

第2章 *

日が傾き始め、カーテンの隙間から零れる光で目を覚ますと
「…駿?」
隣に姿はなく体の鈍い痛みと余韻だけが残り、ベッドから滑り降りると熱いものが脚を伝う。
濡れたシーツと脱ぎ散らかしたバスローブをくるんで洗濯機に放り込むと、そのままバスルームに入り熱いシャワーを浴び、指を入れ中を掻き出すと次々に溢れてくる。
シャワーを終え、タオルで髪を拭いながらバスルームから出ると、バッグからピルケースを取り出し、キッチンのウォーターサーバーの水で飲み込んだ。

いわゆるアフターピル…

着替えを済ませ真新しいシーツに敷き直してベッドに倒れ込むと、太陽の匂いに眠りに落ちる。
目覚めるとバスの到着時間を過ぎていて、慌てて着替えて下に降りていくと幼稚園バスが見えて息をきらして駆け寄ると
「遅くなって、すいません」
「…ママ」
隣に来て小さく手を握る。
「良かった。お迎えに来ないから心配してたんです。今日は弟さんじゃないんですね?」
「弟?」
一瞬固まり
「あ…ええ」
作り笑いを返した。
「しゅんは?」
小さく呟く声に
「知らない。お出かけかな?」
「それじゃあここで。唯ちゃんまた明日ね」
女が手を振ると扉が閉まり、会釈してバスを見送ると唯に目線を落とし
「お買い物に行こうか?」
「うん」
繋ぐ手を揺らして近くのスーパーに着くと、手から離れ菓子売り場に一目散に駆けて行く唯を追いかけ
「唯。店の中を走らないで」
追いつくと駄菓子を手に握りしめ、嬉しそうにカゴに放り込む。
肩を落として、ため息を漏した。
「唯?1個だけだよ。夕ご飯が食べられなくなるから」
そう窘(たしな)めると不満げな顔で見上げる。
「しゅんは…いっぱいかってくれるよ?」
屈んで目線を合わせると
「でも、ママは駿とは違うんだよ?」
「…うん」
菓子コーナーを一通り廻る唯に付き合うと、袋に入った食玩を手にした。
カゴに入った駄菓子をまとめて棚に戻すと
「唯?行くよ?」
動こうとしない体を無言でカートに乗せ、夕食の食材を次々に放り込んで手早く買い物を済ませる。
財布を開くと枚数が少ない事に気付き、小さなため息が零れた。

今に始まった事ではないけど、直接言ってくれれば渡すのに…

手を繋いで家に戻るとキッチンに買い物袋を並べた。
ガスチェアに座り食玩をキッチンカウンターに広げ楽しそうに遊ぶ姿を眺めながら、夕飯の支度を始めた。

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