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♢Fallen Angel♢

第3章 **

ファミレスに着き後部座席のドアを開けると、ぬいぐるみを手放して眠っていた。
「唯?」
揺すっても起きない姿に
「どうする?このまま帰る?」
「眠てるしね…」
扉を閉めようとすると小さなあくびをもらし、瞼を擦って目を覚ました。
「唯たん、夜ごはんだよ」
駿の声に反応して起き上がると満面の笑みを向けて
「しゅん、だっこ」
手を伸ばして抱き上げられる。
ファミレスのドアを開け、案内されると奥のテーブル席を選んで座った。
メニューを広げてキャラクターの皿に並ぶハンバーグを指差して目を輝かせ
「ゆいこれがいい」
「蓮はどれにする?」
駿の言葉に蓮は投げやりに
「食欲ないから…」
タバコを咥えて火をつけた。
吸い終わると注文した皿が並び、テーブルを挟んでかぶりつく様子とは対照的に、蓮は少し箸をつけるだけで食事を終わらせている。
蓮がグラスを手に取ると
「オレが取りに行くよ」
「いい」
ドリンクコーナーでジュースを注いでいると男が近づいてきた。
目線だけずらして男を見ると、見覚えのある顔に平静を装いその場から離れた。
テーブルに戻ると小声で
「客がいた…」
衝立のガラス越しに駿が男を見ると
「バレてないんでしょ?だったら堂々としてたらいいのに」
「駿だって1年前までメンパブで働いてたんだから分かるでしょ?」
「そうだけど…」
伝票を掴んで立ち上がると
「帰るよ」
「まだ唯たん食べ終わってないよ?」
「いいから」
先に行く姿に駿は小さなため息を零し、握っているフォークを唯の指から剥がすようにテーブルに置くと抱き上げた。
レジに並ぶと隣の棚のおもちゃを指差して笑顔を向けている。
「唯、ぬいぐるみ買ったばかりじゃない」
冷たく突き放す言葉に今にも泣き出しそうに顔を歪める。
周りの気配を感じて
「…わかった。ひとつだけだよ?これでいいの?」
おもちゃを渡すと小さく頷いた。
支払いを終えると鏡面のようになった窓硝子越しに男の様子をうかがい、逃げるように店を出た。

子供がいて、それも未婚の母だなんて知られたくない。

マンションに戻るとリアシートからまた寝息が聞こえてくる。
「唯たん連れて帰るから行っておいでよ」
駿は後部座席のドアを開けて起こさないように抱えた。
「いってらっしゃい」
小さく唇を重ねると運転席に乗り込み車を走らせた。

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