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♢Fallen Angel♢

第3章 **

「走らなくても逃げないよ」
小さく笑った。
「でも、予定があるからあんまり時間がないけどいい?」
寂しそうな素振りをみせ、上目遣いで見上げると
「いいよ。行こうか?」
「うん…」
指を絡めるように手を繋ぐと、男の後を続いて歩いていく。
街灯はひとつだけで人気のない夜の公園を照らしていた。
ベンチの前に着くと腕を引き寄せられ強く抱きしめられる。
「苦し…い」
「ごめん。ごめん」
腕が緩み
「エネルギー充電。やっぱり落ち着く」
ベンチに隣り合って座り、コーヒーを飲み終えると
「ほら、ここに来て」
促されるまま男の膝の上を跨がり、迎え合わせに座って肩に腕をかけた。
「いつも思うけどお店とキャラ違い過ぎ」
額を合わせると唇が小さく重なる。
「さすがに店では…これでも店長だから」
蓮の腰に手をまわして、また抱き寄せる。
「月一こうして会うのが唯一の癒しなんだよ」
胸元に引き寄せられ
「ほら、ドキドキしてるの分かる?」
耳を胸元に当てて見上げて微笑むと
「ほんとだ。私もだよ…」
男の指先を握り胸元に当てた。
指先が胸の輪郭を撫で、舌先が首筋をなぞる。
甘い声を漏らすと唇が重なり、ざらついた舌が侵食する。
パーカーの裾を捲り、男の冷たい指先が胸を弄ると唇が激しく重なり合う。
涎が溢れそうになるのもお構いなしに激しく求め合う。
男の胸を押すと、名残惜しいように唇がゆっくり離れた。
「もう…だ…め」
「…ごめん…つい」
膝から降りて寄り添うように隣に座ると男が髪を撫で
「今週は行けなくてごめんね。仕事が外せなくて…」
「前にも言ったけど無理しなくていいんだよ?」
「会いたいから行ってるだけだよ。蓮がデートに誘ってくれても断ってばっかりだし…」
「気にしなくていいのに…」

同伴の誘いか営業のためのデートだなんて言えないけど。

街灯に照らされた時計が目に入り
「もう行かなきゃ…ごめんね」
立ち上がると
「ううん。蓮といると時間があっという間だよ。早く僕のものにならないかな…」
最後の呟きに聞こえないふりをして指を絡めると
「指先冷たくなっちゃったね。無理言ってごめんね」
「何で謝るの?無理じゃないよ。ふたりっきりでいられたもん」
自販機の前で手を離して小さく唇を重ねると
「またね」
車に乗り込んで手を振った。
追う目線に気付くこともなく走り出した。

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